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「IE5・同期リラクタンスモータとは?!」
昨今のSDG’sや原油価格や原材料価格の高騰、政情不安などで、エネルギー削減が各方面で求められる中、モーターで出来る省エネがあります。
モーターは工場など生産設備で使用される電力の約50%くらいを消費していると言われており、モーターによる節電が数%可能になるだけで、大きな省エネ効果が出ると言われています。
そんな中、今注目のモータがあります。
それはIE5規格の『同期リラクタンスモータ (Synchronous Reluctance Motor、以下SynRM)』というものです。
これは、従来のIE3クラスの誘導モータにくらべて、巻線などによる電力ロスが少ないため、同等の出力でも約10~20%くらいの節電になるようです。
要は「電力消費を大きく減らせるモータ」っていうことですね。
では、普通の誘導モータとの具体的な違いを挙げてみます
(原理や構造などの特徴は下に解説動画のリンクを貼っています)
①電力ロスが少ない
従来のカゴ型誘導モータは、回転子の中でカゴ型の二次導体などが発熱して電力が消費されますが、SynRMはこれがほとんど無いため、電力消費を抑えられるようです。
このため、IECクラスとしてはIE5に相当し、現在最高クラスの省エネになります。
SynRMの回転子
カゴ型モータの回転子
②回転数が自由に変えられる
~インバータ使用~
従来のモータでは、使用電力の周波数によって回転数が決まっていましたが、SynRMは構造上インバータがは必要なため、周波数に関わらず回転数が変えられます。
③サイズが小さい
構造がシンプルなため、同出力の誘導モータに比べて一回りくらい小さいようです(出力などによる)
④メンテナンスが容易
回転子などに巻線が無く、モーター自体としての構造がシンプルなため、従来のIE3誘導モータと同等のメンテナンスで運用することが出来ます。
従来からある永久磁石を使った高効率モータの場合、例えばべアリングのメンテナンスでもメーカーへモーターを送らないとメンテナンスが出来ませんでしたが、SynRMは磁石を使用しないので、こういったメンテナンスも自前で行うことができます。
また今後生産量が増えてくれば、価格も抑えられてくると予想されます。
(※永久磁石を使ったSynRMの場合は上記のようなメンテナンスはできません)
⑤磁石を使わない ~レアアース・レス~
設置状況などにより、磁界の発生が困る場所でも使用できます。またレアアースである永久磁石を使わないので、今後も安定した供給が確保されています。
(※永久磁石を使ったSynRMを除く)
同期リラクタンスモータのデメリット
①インバータが必須(直入れ不可)
SynRMの構造上、低回転時に不安定になりやすいため、インバータの使用が必須になり、配線や盤の設置が若干複雑になるようです。
②価格が高い
~生産少(今後は改善される?!)~
現在の需要では、通常のモータに比べて割高になります。また、インバータの使用が必須になるので、その分さらに価格が上がってしまうようです。ただこれに関しては今後の普及などで低価格化が進む可能性もあります。
③出力サイズに制限がある
現在は、これも構造上の理由から、小さなサイズは作ることが難しいようです。
(ただしABBでは非希土類材料の永久磁石を使用して小型化した、同期リラクタンスモータもあります)
※超高効率モータ使用時の注意点
省エネに非常に有望なモータですが、こういった超高効率のモータを使用する際に注意しなければいけない点があります。
①電圧などの見直しが必要
これは過去にトップランナーモータ(IE3)への置き換え時にも発生しましたが、モーターの効率が上がっているのに、古いモーターと同じ電圧で使用すると、回転数が上がってしまいます。このため、かえって消費電力が増加してしまうという現象が発生してしまうので、必要な出力と新しいモーターの電圧を確認してみる必要があります。
②本当に必要な出力がいくらなのかを計る
SynRMなどの高効率モーターの場合、目標とする出力
に対して最も効率の良い電力消費になるよう設計され
ていますが、そもそも設定している出力が実際に必要
とする出力と大きく乖離がある場合、本来の効率が出せません。日本の場合どうしいても「大は小を兼ねる」的な設定にしてある場合が多いので、この点についても見直しの必要があります。
同期リラクタンスモータの原理や構造については、こちらのYouTube動画が分かりやすいです。
超高効率 IE5モータ
ABB 同期リラクタンスモータ(SynRM)
(5.5~315KW)
同期リラクタンス技術は、永久磁石にレアアースを含まないため、永久磁石モータの性能と誘導モータのシンプルさとサービスの利便性を兼ね備えています。同期リラクタンスモーターのローターには磁石や巻線がなく、電力損失がほとんどありません。また、ロータに磁力が発生しないため、メンテナンスも誘導電動機と同様に簡単です。
ABBの同期リラクタンスモータは環境負荷の低減に役立ちます。
ABBのSynRMと親和性の高い『再生銅』を使用することで、モータ製造段階でのCO2排出削減に大きく寄与しています
ABB「Boliden社と提携し、工業製品の二酸化炭素排出量を削減」記事
特徴
•電力使用量を減らし、CO2排出量を削減することで、環境への影響を低減します。
•現在および将来の効率基準を満たし、効率と生産性を向上させることにより、
サステナビリティを改善します。
•モータの故障やダウンタイムを最小限に抑えることで、信頼性を高め、最も持続
可能で長持ちする性能を保証します。
•正確なトルクと回転数制御により、生産品質を向上させます。
•あらゆる産業用途の標準的な誘導モータから置き換えることで、旧来の機器を
そのままアップグレードすることができます。
ABB 同期リラクタンスモータ(SynRM)解説ページ
小型のIE5同期リラクタンスモータ(永久磁石搭載)
ABB EC Titanium インバータ一体型モータ
(0.75~7.5KW)
EC Titanium™ シリーズは同期リラクタンス技術と永久磁石技術を組み合わせた特殊なロータ構造を持った、高効率のインバータ一体型モータで、経済的で環境に優しく、ワイヤレス通信によるIoT対応のモータソリューションです。
ABBのEC Titaniumモータは非レアアース磁性材料を使用しています。
ABBのEC Titaniumは、永久磁石に非希土類材料を使用することで、希土類磁石材料(レアアース)に起因する環境負荷を低減しています。
ABB「EC Titaniumモータ」記事
特長
•IE5効率 - 全負荷および部分負荷で高い効率を実現し、特に部分負荷での可変速運転に
おいて最大16%効率向上を実現
•モータの真上または反負荷側にインバータを設置することで、スペースを大幅に
節約し、配線コストを削減
•調整と制御の柔軟性 - 簡単な設定とABB Ability™接続のためのBluetooth通信だけで
なく、簡単な試運転調整のための有線キーパッドとPCツールを含む豊富なオプション
•電力密度 - より小さいフレームサイズでより高いモータ出力を実現
•高信頼性、低ノイズ - 始動電流が非常に小さく、コギングが少ないため被駆動部側へ
の機械的ストレスが軽減
ABB EC Titanium 解説ページ
https://new.abb.com/jp/abb-nema-motor/ec-titanium-integrated-motor-drive